出産に対する日本と欧米の違い
昔から日本では出産は神の所業であると考えられていました。陣痛も出産も貴いものであるというのが、日本における伝統的な考え方です。そのため、分娩に人為的な手を下すことは控えられてきました。
これに対して、欧米では分娩を「Labor」というように、出産に妊婦を苦しめる肉体的な労務、というような意味が含まれています。この苦役を何とか軽減することを以前から考えられてきたという経緯があります。
その結果、出産の安全性についてどのような現状となっているのでしょうか。
出産の安全性の比較
妊産婦死亡率: 妊娠中または妊娠終了後(42日未満)の女性が妊娠と関連した原因で亡くなる割合で、出産数10万例に対する1年間の妊産婦死亡数の割合で算出されます。
周産期死亡率: 妊娠満22週以降の死産と生後1週未満の早期新生児死亡の割合で、年間出産1000に対する1年間の周産期死亡数の割合で算出されます。これは、生まれて生きていける時期になった児が1週間以内に亡くなる割合を示しています。
日本の周産期医療体制
日本における周産期医療体制は、母子センターと産院と助産院がそれぞれの地域で連携しながら、妊産婦がアクセスしやすい環境で成り立っています。妊娠や出産の異常は急激に変化するため、短時間に医療にアクセス可能な現在の日本の体制が妊産婦と児の安全を守るために最も効果的であるといえるでしょう。
一方、分娩の減少による産科医療機関の減少や僻地医療の問題でこれからは欧米型のような集約化が必要だといわれています。そのことで、出産の安全性についても欧米と似た変化が生まれることが考えられます。
無痛分娩と安全性
2019年において、フランスの周産期死亡率は日本の6倍ほどですが、世界で最も多くの割合で硬膜外麻酔による無痛分娩を行っているのがフランスです。
同年に妊産婦死亡率が日本の約10倍であるのは米国です。米国はフランスと並び硬膜外麻酔分娩の多い国です。
日本においても硬膜外麻酔による無痛分娩の増加に伴い、麻酔による合併症だけでなく、子宮破裂や羊水塞栓症といった母児の生命に関わる合併症が増加してしている現状について「母体安全への提言2023」でリスクへの対応が必要なことが提示されています。
世界の流れ
これらの結果より、現在世界では医療介入を行う硬膜外麻酔による無痛分娩から自然分娩への回帰の流れとなっています。自然分娩に対する勉強も盛んになっている様子です。
当院でのソフロロジー式和痛分娩は、オキシトシン-エンドルフィン効果(鎮痛作用を含む)を最大限に発揮する自然分娩です。ソフロロジー式和痛分娩を通して日本の安全な出産を守り、母児とご家族の幸せな出産への支援をこれからも続けて参ります。
